〜緊急声明(薬剤溶出ステントDES導入に際して)の背景〜 |
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日本心血管カテーテル治療学会 理事長 延吉 正清 |
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薬剤溶出ステント(DES)使用ガイドライン検討委員会 委員長 目黒泰一郎 |
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| 1. |
本声明を作成した背景
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本邦では、クロピドグレルが使用できない状況でDESの使用が承認されるという異例の事態を迎えた。一方、欧米のこれまでのDESに関する臨床成績は、ほとんどすべてクロピドグレルとチクロピジンの両者が使える環境で得られている。したがって、クロピドグレルが使えない場合に想定される問題点について、急ぎ検討する必要性が生じていた。
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| 2. |
声明の目的
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抗血小板剤として、アスピリンの他にチクロピジンしか使えない状況下でDESを用いることの問題点について、ガイドライン検討委員会において急ぎ検討を行い、必要であれば緊急声明ないしは臨時警告のようなものを学会として発信することとした。
しかる後、薬価承認あるいは保険収載前に「DES使用ガイドライン2004」とでもいうべきものをJACCTの責任において作成し、提示すべきであると考えた。
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| 3. |
声明作成にあたって考察されたこと
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(1)DESを用いた場合の抗血小板剤投与期間について
通常のBare Metal Stent(BMS)の場合は、留置後アスピリン、チクロピジンの併用が少なくとも2週間行われれば、以後チクロピジンを中止してもSub Acute Thrombosis(SAT)はほとんど発生しない(参考資料1、2)。一方、重篤なチクロピジンの副作用が発現するのは、主として2週間以後である(参考資料3)。クロピドグレルが使えない本邦においてもBMSを比較的安全に使用し得たのはこのためである。
しかしながら、DESの場合は、その特性からステントストラットが内膜で被われる時期はBMSより遅れる可能性があり、BMSでの前述の知見をそのままDESに適応することには問題がある。
現在欧米では、クロピドグレルなどの抗血小板剤の投与期間を3ヶ月以上としており(参考資料4)、さらに最近ではより長期(1年)の投与が望ましいと言う意見もでている(参考資料5)。このような提案や意見が出された背景には、チクロピジンないしはクロピドグレルを3ヶ月以内に中止した症例でステント血栓症が無視しえない頻度で発生した事実があると推測される(参考資料6)。
したがって、現時点ではDESを用いた場合の抗血小板剤至適投与期間については、海外同様3ヶ月以上、可能であれば1年という指針を本検討委員会も提言したい。
(2)チクロピジンの副作用発現頻度とその時期について
チクロピジンの副作用に関して、次に考察したい。
クロピドグレルと比較した調査として代表的なものは2つあり、おのおの9.1%vs 4.6%、10.6% vs 5.3%となって、チクロピジンの副作用発現率が高いことが確認されている。(参考資料7、8)
また、チクロピジンの3大副作用、すなわち顆粒球減少、肝障害、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の発現時期はほぼ90%が2ヶ月以内となっている(参考資料3)。副作用発現率が9ないし10%という頻度は看過し得ないものであり、また重篤な副作用の発現時期が投与開始後2ヶ月以内に集中するという事実、そしてその時に代替の抗血小板剤(すなわちクロピドグレル)を我が国が現段階で有していないという事態は重く受け止めるべきであろう。
なお、チクロピジンの代替薬剤としてシロスタゾルを選択しうるという意見もあろうが、同剤はPCIでの保険適用がなく、有用性においても国際的評価は得られていない。本邦での比較調査(メタアナリシス)でもSAT発現率がチクロピジン 0.8% vs シロスタゾル 4.0%(p<0.0001)(参考資料9)となっており、シロスタゾルはチクロピジンやクロピドグレルの代替薬とはなり得ない。
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| 4. |
まとめ
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BMS時代、チクロピジンの副作用発現例のほとんどはチクロピジンを中止するか、シロスタゾルに切り換えることによって、これまで臨床的に問題なく対処し得た。これは、チクロピジンの投与期間がほぼ2週間という短期間で十分だったからという理由によるところが大きい。しかし、DESではその特性から、少なくとも3ヶ月間の抗血小板剤の投与が必須とされている。したがって、チクロピジンの代替薬を持たない現状でstent thrombosisが発生した場合に、生命の危険が発生する可能性のある部位にDESを留置することは慎重に検討されるべきである。
そこで、クロピドグレルが使えない状況下でも安全にDESが使用されるよう、JACCTとして声明を発し、警告を行う義務があると考えられた。
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| 参考資料 1 |
Berger PB, Bell MR, Hasdai D, Grill DE, Melby S, Holmes DR. Safety and Efficacy of Ticlopidine for Only 2 Weeks After Successful Intracoronary Stent Placement. Circulation 99:248-253 1999
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| 参考資料 2 |
Fujiwara S, Endo N, Terashima M, Ito Y, Abe S, Otomo T, Ogata K, Honda H, Kuhara R, Miyazaki Y, Kawashima O, Takeda H, Meguro T. Safety and efficacy of 2-week ticlopidine administration after coronary stent implantation: adverse events and 6-momth angiographic outcome.
日本循環器学会 第65回日本循環器学会学術集会巻 2000号
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| 参考資料 3 |
第一製薬株式会社パナルジン安全性社内資料
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| 参考資料 4 |
Donohoe D. July 7,2003 Physician Letter on SATs in Association with the CYPHER Coronary Stent. http://www.cordis.com/active/crdus/en_US/html/cordis/downloads/Letter.pdf
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| 参考資料 5 |
Kereiakes DJ, Choo JK, Young JJ, Broderick TM. Thrombosis and Drug-Eluting Stents: A Critical Appraisal. Rev cardiovasc Med.;5(1):9-15 2004.
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| 参考資料 6 |
V. Pasceri, A. Granatelli, C. Pristipino, F. Pelliccia, B. Pironi, G. Richichi. High-Risk of Thrombosis of Cypher Stent in Patients Not Taking Ticlopidine or Clopidogrel. Am J Cardiol 92 ( Suupl6) :91L 2003.
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| 参考資料 7 |
Bertrand ME, Rupprecht HJ, Urban P, Anthony H. Gershlick AH. Double-Blind Study of the Safety of Clopidogrel With and Without a Loading Dose in Combination With Aspirin Compared With Ticlopidine in Combination With Aspirin After Coronary Stenting : The Clopidogrel Aspirin Stent International Cooperative Study (CLASSICS) Circulation 102: 624 - 629 2000.
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| 参考資料 8 |
Moussa I, Oetgen M, Roubin G, Colombo A, Wang X, Iyer S, Maida R, Collins M, Kreps E, Moses JW.
Effectiveness of Clopidogrel and Aspirin Versus Ticlopidine and Aspirin in Preventing Stent Thrombosis After Coronary Stent Implantation. Circulation 99: 2364 - 2366 1999.
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| 参考資料 9 |
一色高明 国内におけるステント留置術後のチクロピジンとシロスタゾ−ルの亜急性血栓性閉塞防止効果に関する臨床比較研究 日本心臓病学会 2003.
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